仏西バイリンガル、仏墨バイカルチャーの少年ニコラを迎えて、おもてなしの天竜/浜松旅。7月半ばの大雨の翌日。旅は天竜川下りから始まった。いつもは川底の石まで見えるというのに、すっかり水かさが増え、濁っている。苔に泥が積もってしまったので、水が澄んでも鮎は帰ってこないという。鮎たちは、大雨の前に支流の小さな清流に避難するそうだ。確かにきれいな流れの上には川鵜がたくさん飛んでいる。
一両の列車、飯田線がちょうど横切った。もしかすると、船の時刻は電車にも合わせてあるのだろうか。川沿いは季節によって見所がたくさんあるようで、藤の季節には山一面が藤色になり、桜の季節には、満開の桜の中をすべり下りる全長60メートルものすべり台があるとか。7月末の花火大会の折には、川沿いの病院の病室が見舞い客でいっぱいになるらしい、と船頭さんが話していた。
天竜二俣駅。古い列車の車両(ミニトロ)が置いてあり、乗り込んで自転車のペダルでこぐと駅構内の線路を少しだけ行き来することができる。ちょっと足の長いアンパンマンは、「ミニトロにのるときは大きい人と一緒に、切符を買って入ってください」
「温泉と美術館、どっちに行きたい?」「温泉!」ということで、駅のパンフレットで見た「あらたまの湯」へ。森林公園の中に今年4月にオープンしたらしい。入り口の傘たてには、傘よりももっと大切な杖が預けてあった。
ジャグジーと源泉を楽しんだ後、そのまま外に開けたお風呂場のデッキチェアで蝉時雨を聞きながら一眠り。目が覚めたら水を飲んでまたお湯とサウナ。一人だけ男湯へ行ったニコラは、地元のおじいさんたちと日本語で話ができたと喜んでいた。
翌日の浜松まつり会館。五月の凧揚げ合戦に使われる凧。昔は五月人形のように、凧といえば男の子が誕生したときのお祝いだったようだが、今では女の子の名前が入った凧もある。けんか凧の様子をビデオで見たニコラは「パンプローナ(の牛追い祭り)よりもすごい熱気」。スペインにも行ったの?
遠州灘は遊泳禁止になっているそうだがサーファーの姿がちらほら。遭難する人が後を立たないらしく、空には沿岸を警備するヘリコプターが二台飛び回っている。アカウミガメの産卵場所には、保護ネットの中につくりものの大きなウミガメも飾ってある。砂丘では地元の高校生が部活動トレーニング中。迫力のある先生が気合を入れ、オレンジ色のユニフォームの部員同士も声をかけあって、砂に打ち込んだ杭をざくざく飛び越していた。