2008年5月29日木曜日

ラジオの前から動けない

ラジオの前から動けず、ただただ耳をすます、という経験をした。
フランスにいたときのある夜、眠りかけていたときにラジオから流れてきた音楽にぱっと目が覚め、
Maurice Vanderの名を書き取って以来のことだ。

台所に降りるつもりでいたそのとき、ラヴェルのボレロのヴォーカル版が流れてきたのだ。

一瞬ボロディンの「中央アジアの平原にて」かと思い、あれ?とわからなくなったけれど、
トン、トトト、トン、トトト、ト・ト・ トン、トトト、トン、トトト、ト・ト・ 
いやいや、やっぱりこれはあの曲。

メロディーだけでなくパーカッションの部分まで、
声だけであの精緻な厚みが組み立てられていく。

息を呑みながら最後まで聞き、誰が演奏しているのかと耳を澄ませたら
何も言わないままに次の曲が始まってしまった。
一体誰なんだろう。

2008年5月26日月曜日

全身で「おめでとう」

金曜に大学のそばで見た車。

車の中には「誕生日おめでとう」の銀色風船、
車体は、誕生日おめでとうメッセージを書きこんだ
たくさんのハート型ポストイットで飾られている。

expresivaなひとたち!

2008年5月25日日曜日

ライオンの散歩

朝、ふかふかレトリバーのみっちゃん(Mitzy) を連れて散歩に出た。

散歩道の途中にある家のガードマンと目があったので、
Buenos días と挨拶をすると、その人は言った。

「おはよう Señorita、ライオンの散歩かい?」

2008年5月24日土曜日

特殊なメディア

トイレの落書きというのは、
どういうときに書きたくなってどんな気分で書くものなのやら、見るたびに不思議に思う。

今までに、ついじっくり読んでしまった落書きは
誰かの書き込んだ悩みに大勢があたたかく答えているもの。

大学の中央図書館で今日見たのは、新しいタイプだった。


ねえ…哲文学部のWebページを教えて、
 
         www.******
 
よろしくね

 
         googleで調べたら             

2008年5月22日木曜日

呼び寄せる家

机に向かっていたら、どこか近くからニャー、ニャー聞こえてきた。猫?
トカゲやサソリが知らずに入って来るのだから、猫の一匹くらい入ってきても不思議ではない。
そういえば以前、鳥が迷い込んで来たこともあった。

この家には、生き物を呼びよせる何かがあるのかもしれない。
と書きながら、自分も、偶然が重なってこの家に住み始めたことを思い出した。
私も呼び寄せられて居ついたのか。

猫。忘れた頃にフギャーと喧嘩声のようなのが聞こえてきた。
アンドレス(家主の息子さん)の部屋にいるのかと思ったけれど、尋ねたら違った。
怪我でもして、ここの屋根に避難しているのだろうか。

2008年5月21日水曜日

ホールズ・カクテルシリーズ

「ピニャ・コラーダ味」。

しばらく見なかったこのホールズ。
今朝、道端の出店にパイナップル模様を見つけて、早速買った。
甘酸っぱくて濃厚な一粒に、満足。

表示によれば、原産地はメキシコ。
Costa Rica, Guatemala, El salvador, Honduras, Nicaragua, Panamá
の各国で売られているようだ。



変わり種と言えば、限定版の「ビール・レモン」味。

ビールにレモンを絞り、グラスの縁に塩をつけて飲む「チェラーダ」は
お酒をほとんど飲まない私にとっても美味しいので、
面白半分に買ってみた。

気合の入った 包装は、すっきり爽快美味しそうに見える。
でもこれは…美味しくない。
原材料に入っているモルトがビール風味の素なのだが、
爽快とはほど遠い味わい。


日本版、梅酒ホールズなんていうのはどうだろう。

2008年5月20日火曜日

いる

自分の部屋で、あまりにも思いがけないものを目にし、
一度目をしっかり目を閉じてから、また目を開けてみることがある。
やっぱり、ほんとうにいる。

部屋の壁に、サソリ。 浴槽に、トカゲ。












どうも不思議なのは、
こういう珍客が 「入ってくる」 ところを見たことがないこと。
彼らは、いつの間にか 「いる」。

開け放していた窓から入ってきたのか、
テラス→廊下→部屋のドアを通って入ってきたのか、
はたまた一階にある暖炉から入り、螺旋階段をのぼってきたのか。

トカゲがいた夜は、ちょうど出かける前だったので、
写真だけ撮ってあとはバスルームを共有している家主の息子さんに任せることにした。
メモくらい残しておいたほうがよかっただろうか。

2008年5月19日月曜日

もどかしさ

日本の友達が帰った後、
久々に母国語で話す(比較的)自由な感覚を思い出してしまったためか
思い通りに言葉にできないもどかしさを、いま強く感じる。

私がウロウロと表現を探してさまよっているときに
辛抱強く待ってくれる相手、「こういうこと?」と読み取って尋ねてくれる相手と
1対1で話すときには、どうにか中身のある言葉が自分からも出てくる。

けれども大勢での会話の場合、
球技をスタンドから観戦するように、ボールの軌跡、行き先を追うのに精一杯で、
フィールドに入って自分もやりとりに加わるまでの壁の、高いこと。

まったくレベルの違う世界の話で、引き合いに出すのもおこがましいけれど
田口壮選手(フィラデルフィア・フィリーズ)のブログを読んでいると
もどかしくても食らいついていこうという気概が沸いてくる。壮さんにヒットが出ますように。

2008年5月18日日曜日

お客さまは…

少し前のこと。
おなかの調子の悪かった私がおかゆを温めに一階に降りると、
台所がやけに賑やかで、とてつもなくいい香りがしてきた。

そこにいたのは、
家主のセシリアの従兄(南の町メリダ出身)・従妹(北の町チワワ出身)の二人。
たまたま同じときにメキシコシティに来ることになり、二泊三日、セシリア家に滞在するとのことだった。

夕飯を一緒にどうか、と誘ってくれたのだが
スポーツドリンクとビスケットだけの一日の直後だったので、お礼を言って断った。
けれど、何とも美味しそうな香りが、鼻をくすぐるどころか全身を揺さぶる。

プロなんですか、と尋ねると、従兄は本当に20年間カンクンのレストランでシェフをしていたとのこと。
ついに誘惑に負けて、端整なサラダを少し分けていただいたら、
両手の血管がじわりとするほど美味しかった。


夜も更けてお皿を洗いに台所に降りると、なんと二人は台所をピカピカに磨いていた。
そして、「明日は、君も食べられるようにおなかに優しい料理をつくっておくよ」。

翌日。
7時過ぎに大学から戻ってドアを開けると、有名料理屋の厨房のような香りが漂ってきた。
台所に行って二人に挨拶をし、今日は何をしていたのかと尋ねると、
昼にテオティワカンのピラミッドにのぼり、午後にはシティに戻って市場に買出しに行っていたとのこと。

セシリアとアンドレス(息子さん)が帰ってくるのを待ち、食卓に赴くと…
サラダと、御飯と、鶏肉の緑トマトソース(チリ抜き)。
「油もほとんど使わずに料理したから、きっと食べても大丈夫だよ」


美しい盛り付けに目は丸くなり、一口食べれば笑顔になる美味しさだった。
そして更に、会話上手、もてなし上手なのだ。

さて、翌日、二人の出発の日。
この日、私は家で作業していた。午前10時過ぎにお茶を入れに降りると、
すでに出かけているはずだった二人は、一階のダイニングと台所を掃除していた。

「午前中は出かけて、昼に空港に向かうつもりだったんだけど、
あまりせかせかするのもいやだったから、家にいることにしたの」
従姉の家は、塵ひとつないくらい完璧に手入れが行き届いているらしい。

いくら従兄姉とは言え、こんな来客があるものだろうか。
意外性。おばあさんと犬の詩(マザーグース)を思い出した。
あのいたずら犬がこの二人のようだったら、おばあさんも毎回肝を冷やさずに済んだだろう。

2008年5月16日金曜日

東京海上のメキシコオフィス

保険金請求の手続きのため、
最寄駅を聞こうと東京海上のオフィスに電話をかけたら
3月末に移転したばかりだと聞いた。電話してよかった。

新しい住所は:
Blvd. Adolfo López Mateos #261, piso 5.
Col. Los Alpes, Del. Alvaro Obregón,
C.P. 01010.

(電話番号は「ハンドブック」に書いてある通り:
+52 55 5218-2152 [日本語直通]
+52 55 5278-2100 [代表] )

メトロからの行き方は:
Metro Barranca del Muertoを降りて西へ曲がる
→ペリフェリコ(Blvd. Adolfo López Mateos )沿いを南に進む
→しばらく歩く。右手に青いビル(UNIVISIONの文字)が見えてくると、もうそろそろ
→その先の歩道橋で道の右側に渡り、もう少し進んだところにある、新しい青いビルが目的地

着いてから知ったことは:
・支払いは銀行振り込みだけでなく、小切手で受け取ることができる
・海外旅行保険金請求の手続きには、パスポートの出国記録のページのコピーが必要

それから、5階の入り口で「誰との面会か」を聞かれるので、
事前に電話連絡をし、担当者の名前を聞いておくにこしたことはない。


ちなみに、ペリフェリコを歩き始めて少ししたところには
赤瀬川さんの好きそうな、真ん中が派手に途切れた歩道橋がある。渡れない。

実際に渡る歩道橋の方は、
渡りきる直前のところで、まだ上るの!?と思うくらい高く上ることになる。
全部で何車線分あるだろうか、トータルの距離も長いので、高所恐怖症の人は大変だろう。
私もすこしぞっとした。

2008年5月15日木曜日

金網のCoyoacan

土曜。遠くメキシコを訪れてくれた友達に
賑やかな週末のコヨアカンを見せよう、と
久々に行ってみたら、何と!

民芸品、お香、三つ編みの店…
あれこれの屋台が
所狭しと立ち並び、
すれ違うのもギリギリの賑わいだったのに。

二頭のコヨーテ像の広場も、
教会の前の広場も、
どちらも金網に囲まれて見る影もない。





foto by H. Horinaga

教会側の金網の外側には、いくつかの出店が横一列に肩を並べて細々と商品を売り、
店を出し続けるための支持を求め、署名を呼びかけていた。
その正面には、警察の角ばったトラックが静かにとまっている。

広場の改修工事のため、ということらしいが
新聞Universalの記事を後から見たところによれば
公式な手続きが取られないまま工事が強行されたのが原因で、こうして対立が続いているようだ。

Café de Jarochoまで行ったら、この店は相変わらず盛況だった。
修復が進んだ後のコヨアカンは一体どうなってしまうのやら、と思いながら、
植え込みの縁に腰掛けてアイスココアを飲んだ。

2008年5月13日火曜日

レフォルマで風を切る

週末に高校時代の友人がメキシコシティへ来た。
新聞社や大使館、高級ホテルの立ち並ぶ中心街の目抜き通り、
レフォルマ通りを自転車に開放する日曜イベントに行ってみた。

自転車も貸し出しているとHPにあったがスタンドの場所はわからず、
スタート地点のチャプルテペック公園で警官に尋ねたら、
てくてく歩いた末に到着した先は、公園内常設の貸し自転車屋だった。

ようやく自転車を手に入れてレフォルマに出たら、あちこちにスタンドを発見。
ともあれ、後で見たところによると、このイベントの自転車を借りるには
メキシコの選挙人登録証がないといけないらしい。


広々とした車線に並木道、風を切って走るのは抜群に気持ちがいい。

噴水やモニュメントの聳え立つロータリーの手前で信号が赤になると、
そこはストップ。

警官に見張られながら細々とレフォルマ横切る車をやり過ごし、
青緑を合図に自転車の群れがいっせいにスタート。

群れは間もなくばらけ、それぞれのペースで走っていく。

チャプルテペック公園からソカロまで10Km、
セントロの細い道も、コース内は自転車天国状態で走ることができる。
これは癖になる。                          

次回の開催は、と探してみたけれど、
5月11日の情報のほかに出てきたのは2007年のものだった。
また見つかりますように。

2008年5月8日木曜日

Mío

(5月2日撮影)

サラ(小学3年生)は名づけ名人。
コーヒー色の子猫(♀)は"Capuccina",
そしてこの半野良の柔らか猫は "Mío" (ミーオ、わたしの).

「隙があれば家の中に入ろうとするんだから」と
警戒心を露にする大人たちのつぶやきもどこ吹く風、
はしゃぎまわる子どもたちの声を遠くに聞きながら、ミーオは気持ちよく昼寝。



2008年5月7日水曜日

タクシーで病院へ

二ヶ月ぶりに調子を崩して病院へ行く羽目になり、タクシーに乗った。
胃腸をやられてしまったので、酔わないためにも話しかけた。

今回の運転手さんは、98年までメキシコの東芝で運転手として働いていたそう。
担当していたのはメキシコ支社長?(この部分は石畳のガタゴトに紛れてあやふや)

担当していたその人は、コロンビアに数年住んだあと、メキシコに15年ほど滞在し、
日系企業社員の誘拐事件が続いたために日本に引き上げたけれど、
毎年メキシコを訪れているらしい。

「とても働き者でタフ」なその人について、運転手さんはエピソードを語ってくれた。
テキーラを二本飲み干して、ビールを飲み、その翌朝。7時から「仕事に行くぞ」!

昼ごはんのときには、日本食レストランに一緒に行って
いつもご馳走してもらっていたそう。
「運転手仲間のメキシコ人のなかには、慣れない料理に不満をもらすのもいたけど、
 私は好きでしたよ。もちろん、普段の食事とはだいぶちがうれど」

最近では、日系企業の運転手の募集条件がだいぶ変わってしまったらしく、
英語を話せることが重要になっているとのこと。
そして、商工会議所(?別の場所だったかもしれない)で行われていた
無料日本語講習も
有料になってしまったらしい。

あれこれ聞きながら横目で道の名前を追っていたが、どうも見慣れた名前が出てこない。
「あれ?そうか、行き先はスペイン病院でしたね?
 別の病院に着いちゃいました。でも大丈夫、ここからそう遠くないから。」

早めに家を出てよかった。

2008年5月4日日曜日

スーパーマン途方に暮れる


勇ましく登ったところまではよかったが、
立ち上がって見ると…
自分がどれだけの高さに一人でいるかを意識したのか、
間もなく、ママを求めて泣き出した。

2008年5月3日土曜日

千里の道


「              2008年5月1日

1万kmの旅も、ほんの一歩から始まる

 
                 中国の諺」



近所のお店の軒先で見つけた石版。

「千里の道も一歩から」に、こんなところで再会するとは。
そして、起源が中国にあったとは。

2008年5月1日木曜日

ウキ

少し前から雨季に入った様子。
夕方になると空模様が怪しくなり、
重い空からゴロゴロ聞こえてきたかと思うと、ポツポツ雨が降り始める。

いかにも雨の降りそうなどんより曇り空のある日の、夜七時ごろ。
遠い雷鳴を聞いて図書館を出、メトロに向かっているうちに案の定降り出してきた。
面白いのは、傘を持ち歩かない人の多いこと。午後の雨が数日続いた後だったのに。

傘がないのに雨が降ってきても、道行く人の様子はなんだか楽しそうでもある。
ともだち二人でキャンバス地のような布をかぶり、足並み揃えてメトロへ急ぐ学生や
ダンボールを傘代わりにしてのんびり歩いているおじさん。

お世話になっている家に乾燥機があるおかげで雨季を恨むこともなく、
鳥の低く飛ぶ、雨の前のしっとりとした空気の匂いを懐かしく深く吸い込み、
心なしか鮮やかになったように見える木々の緑を眺めて、心の中はウキ。