2007年9月17日月曜日

しばらくの間

旅に出てきます。
10月に東京へ戻ってから、
少しずつ旅のご報告をしていきたいと思います。

2007年9月15日土曜日

赤毛のAnaからの知らせ

8月18日に書いた「詩人との待ち合わせ」(ラベルは墨流)。
その日に一緒に試合とアルゼンチン料理を楽しんだのは
詩人Pedro Serrano氏、

肩までのまっすぐな髪をきれいに赤く染めたAna、

真っ黒な瞳で話をじっと追い、

時が来るとほれぼれするような論を展開するIvan。


今朝、Anaから知らせが届いた。

Pedro Serrano氏が中心となり、 ネット上で詩を発信する
Periódico de Poesía (左のタイトルからリンクへ)が始動した。

詩、
評論、

書評、

朗読の音声、
文学賞の応募情報、
文学関連の催しについての情報…

冒頭にあるペドロ先生の"Defensa de la poesía"(「詩の擁護」)を読み、
ドキュメンタリー映画『ベルリン・フィルと子どもたち』から書き留めた
一節が頭をよぎる。
「芸術は贅沢品ではなく、必需品だ」

2007年9月13日木曜日

一月の川

ブラジルの波を受けて以来、
寝る前にポルトガル語教材のCDをかけている。
ランダム設定にしていた昨夜、

「文法補遺 3 月・季節の名称」
という淡々とした日本語の声の後に聞こえてきたのは

janeiro, fevereiro, março, abril...

そうか、Rio de Janeiro は「一月の川」。

南半球だから、一月は真夏。
vamos ao sul と言ったら、

赤道から離れて涼しいところに行くことになるのか…

2007年9月11日火曜日

9月11日

小川洋子さんの『博士の愛した数式』をついに読んだ。
中央線で最初のページを開いてから、吸い込まれるように読み進み
帰りの電車が自分の降りる駅に着いてしまうのが惜しかった。

夜にソファで続きを開き、
雨の音をバックにどんどん進み、
クライマックスに向かう途中ではっと目がとまった。

ルートの誕生日は、9月11日。
読んでいたこの日の日付も、まさに、9月11日。

6年前の9月11日以来、
911という数字にはひとつの大きな意味が与えられたが

別の輪が911という数字を通って回っているのを見た。
それも、ほかにもたくさんある輪のうちの一つでしかない。

博士とのやりとりを読みながら、
作品の世界を思い浮かべるのともうひとつ平行して
高校のときの数学の先生を思い出した。

数学の美しさを語り、証明の美しさを語り、
難しい問題は「これは少しく悩ましい」と言いながら
深緑の黒板に、几帳面でチャーミングな傾いた字で
白いチョークで見事な解法を展開していく後ろ姿。
「理に至る」という、
まさに数学者にぴったりの名前の先生は
お元気でいらっしゃるだろうか。


スペインへ(2)

渚さんからのお知らせを転記します。
スペイン大使館で開催されている原画展が、
いよいよ明後日13日、最終日を迎えます。
最終日は閉館時刻を夜8時半まで延長するそうです。




「スペインへ行きたい!」展
スペインを紹介するイラストガイドブック「スペインへ行きたい!」の原画展、
およびプレゼンテーション


スペイン・スケッチをスペイン大使館にて発表致します。
昨年末、メイツ出版より発行された著書「スペインへ行きたい!」の原画約30点。
いずれも色褪せた古本紙の上に描かれ、色の濃淡など鮮やかに映えるスケッチ画をご覧頂けます。


■また、会場であるスペイン大使館へは、
入り口で個展を見に来た旨を伝えればスムーズに会場へ入れます。
ご心配ありません。
日時:2007年8月31日(金)~9月13日(木) (土日は閉館)
時間:10:30am~7:00pm (最終日は8:30pmまで)
場所:スペイン大使館 (入場無料)

 〒106-0032 東京都港区六本木1-3-29

アクセス 南北線 六本木一丁目駅2番出口 徒歩5分、
日比谷線 神谷町駅4b番出口 徒歩10分以上、
銀座線 溜池山王駅13番出口 徒歩10分
アクセスマップ http://gmap.jp/shop-695.html

■会期中はスペイン政府観光局よりスペインに関連する資料の配布もございます。

HP www.oceandictionary.net/~nagisa-n/  E-mail nagisa-n@sainet.or.jp
Blog http://blog.livedoor.jp/nakaumx3/

2007年9月10日月曜日

「できろ!」

8月22日に「発想の宝庫」で取り上げた
ご近所の一輪車ガールズが、

ついに傷だらけアザだらけを脱出した。


日曜の夕方、

わくわくしたような、ちょっとうわずったような声で

今度はサザエさんの替え歌で景気をつけながら、

手すりを離して 一こぎ、二こぎ、三、四、五、六……

二人の興奮は高まり、
歌の中では
ドラ猫がサザエさんを追いかけるどころか

のび太くんがドラえもんを追いかけ始める。
自分がペダルをこがないで見守る番のときには、きれいな裏声で
みんなが笑ってるー わっはっは
子犬も笑ってるー (・)ワンワン 
絶妙な休符を入れる感覚がすばらしい。


「できろ!」と
お互いに、そして自分にもおまじないをかけて
初めはペダル毎にぎくぎく、次第にすいすい進み始める二人。

自分たちだけの間で通用する、そんな動詞活用が懐かしい。


二人の脇には、
こないだまで自動車型のおもちゃにまたがっていたちっちゃな妹が
補助輪つきの自転車を乗り回す姿があった。



2007年9月9日日曜日

光の原色の混ざる場所

土曜日、ブラジルフェスティバルに出かけた。ここまで大勢の人が集まっているとは!へこへこにお腹を空かせて代々木公園に着き、お目当てのシュラスコの列に並ぶ。食べ応えがあって美味しい。いくらでも食べられそう。



ステージの見える歩道橋に座って、揚げパンのようなひき肉入りパステウを頬張る。ライブのステージに二人の女性ダンサーが現れた。カーニバルのような惜しみない出で立ちと見事な体の動きに男性陣の視線は釘付け。
人の流れも変わりステージに向かう流れが生まれる。
パナマ人の友だちがブラジル人の友だちに何か聞いて驚いている。
「あれでも日本向けに、いつもよりたくさん着ているんだって!?」


音楽に合わせ、緑地の国旗の両端を二人で持って翻す男の子たち、
こどもを肩車して踊るお父さん、楽しげな緩めのステップが生まれる家族連れ。友だちの友だちが通りかかって輪に加わり、別の友だちを見つけ、その輪に加わり、出会いが出会いにつながり、色が混ざっていくあの素敵な混沌。

人の出会いは光の原色を混ぜ合わせるよう。

濁って黒になったりせずに、明るく光になっていく。

2007年9月7日金曜日

ブラジルの波

「Curitibaに着いたよ」と、エドゥアルドから知らせがあった。
8月に友だちを介して知り合った(amigo de amigo es amigo)
メキシコ人の元気なグラフィックデザイナー。

12月にバルセロナで行われた
未来のエコ家電デザイン国際コンペの授賞式で
初めて外国へ出たという彼は、

8月に一ヶ月弱日本に滞在し、30日にメキシコシティに戻り、

DV撲滅キャンペーンに応募するCGアニメーションを送り、

愛車(何cc?大きなバイクの写真を見せてくれた)を整備し、

翌日にブラジルへ渡った。

これから半年間、デザインの仕事依頼を受けた企業で働くらしい。


クリチバは一体どこだ?と探すと、

ブラジル南部、パラナ州の州都。

パラナ州から届いたポルトガル語混りのメッセージを読んでいたら、

ブラジルポルトガル語熱に火がついた。


以前使ったCD付きの教材を棚から引っ張り出し、
さっそく聞いてみれば
この声はサンチアゴさん!
折りしも、この土日には代々木公園でブラジルフェスティバル(9/8, 9/9)
国際フォーラムでは
ブラジル映画祭(9/5- 9/9)。

Tem mais samba

No encontro que na espera


2007年9月5日水曜日

オレンジ、タマネギ、地球、太陽

『アフンルパル通信 ii号』に掲載していただいた小文に引用した
ポール・エリュアールの詩の一行:
"La terre est bleue comme une orange" 
(地球は青い オレンジのように)


着想の源について尋ねられたエリュアールの

「オレンジが傷んでいてほんとうに青かったんだ」
というコメントをどこかで読んだけれど
ほんとうかどうか。

それが真実かどうかは、あまり大した問題ではないと思う。

地球の青とオレンジのオレンジ色…に鮮烈な印象を受けるのは

色相環でちょうど向かいあった色、
補色の関係にある、というところにもあるのではないだろうか。

正反対のものが結びつく新鮮な驚き。


しかも、"LA" terre(英語なら"THE Earth")は「唯一の」ものなのに

それが "UNE" orange("AN" orange)になってしまう
というのも、
地球がたくさんなっている木を想像したり、

はたまた、一個のオレンジにひとつの世界がある、と想像したり。


『アフンルパル通信』、「太陽の国のタマネギ」の最後:
"Aquí en México, el sol es blanco como una cebolla"

(ここメキシコでは、太陽は白い タマネギのように)


これは、文章を書きながら、

エリュアールの詩を思い出し、思いついたもの。

『通信』の発行者吉成さんとのやりとりの中で

本文にも載せることにしたのだけれど、

どういう形で全体に組み込むか考えていくうちに

タマネギは白いのか、褐色なのか?
(そして、どこから?)
タマネギなのは太陽なのか、自分なのか?
(両方なのだとしたら、  
自分をタマネギにするのは太陽の熱と光)


予期せぬものが生まれていた。

人との会話では、話し相手との相互作用で

自分からも思いがけない考えが生まれるけれど

文章を書くときにも、文字と沈黙の対話をしている。


ところで先日、
『ユリイカ2007年8月号』 澁澤龍彦特集
に掲載された中田健太郎氏の
「入れ子のなかの物語 
澁澤龍彦『思考の紋章学』 とその後」
でも
タマネギの形象が論じられているのを発見した。
内に広がる無限と外に広がる無限と。

2007年9月3日月曜日

手紙と「手」

パパ・タラフマラ公演
「トウキョウ⇔ブエノスアイレス書簡」(2007. 10.2-10.7)
の演出助手をしている友人から先日聞いた話は、
すぐには本当のこととは信じられなかった。
舞台芸術研究所の
19歳のある研究生は、
舞台の主要なモチーフになっている「手紙のやりとり」が
現実味のあるものとは、とても思えないのだとか。
メッセージのやりとりと言えば、電子メールや携帯メール。

80年生まれの私はぎりぎり最後の手紙世代なのだろうか、
暑中見舞い、年賀状、封書、絵葉書、それに
中学や高校の授業中に回した膨大な量の手紙の記憶は鮮やかで
大学の学部生時代までの友だちなら、
字を見ただけで誰の書いたものか言い当てる自信がある。

でも待てよ、と思った。
ここ数年の新しい友だちや知り合いの中には
どんな字を書くか知らない人もいる。
電子メールは簡単便利ですぐに届くけれど、
なんだか味気ないこと。

いつもはメールでやりとりしている相手から
手書きの手紙が送られてくると、
ちょっと特別な、あたたかい、本人に近い、そんな感覚になる。

古語の「手」には「筆跡」という意味もあることを知ったとき、
いいな、と
とても気に入ったのを思い出した。

2007年9月1日土曜日

スペインへ

昨晩、9月13日まで六本木のスペイン大使館で開催されている
中内渚さんの『スペインへ行きたい!』原画展
オープニングパーティーに行った。

開始時刻には間に合わず、
残念ながら渚-itaのスピーチは聞けなかったけれど
スペイン大使館の地下、白い壁のおしゃれな空間に
展示されたたくさんの旅の絵に囲まれながら
フラメンコにスペインギター、
トルティーリャ(スペイン・オムレツ)、チーズ、
シャンパンに赤ワイン白ワイン…

このイラスト・ガイドブックは、
Nagisitaがスペイン各地を旅して描いたスケッチをたっぷり楽しみながら

地図、ホテルや店の情報などを見て実際の旅を計画することもできるし

部屋に居ながらにして旅行している気分にもなれる。
その気になれば、簡単なスペイン料理を作ってみることもできる

絵つきのレシピまで!


繊細で的確な線と瑞々しい色使いが特徴的なNagisitaの絵。
名所といわれる場所や風景のスケッチは勿論魅力的なのだけれど、
それだけでなく、スケッチの端々に書き込まれている街の人たちの姿、
あるいは、ほかの観光客の姿を眺めていると、
自分がどこかを旅したときのざわめきや足の疲れまでが蘇ってくる。
あちこちで出会った人、偶然居合わせた人たちの一瞬を捉えて
生き生きと切り取る巧さの奥には、
人が好き、というNagisitaのチャーミングな人柄があるのだろう。

おしゃべりも大好きな彼女が、スケッチの脇に
溌剌とした字で書き込んだコメントを読んでいくのも楽しい。
あれこれ話しながら一緒に旅をしている感じ。

ちなみに、
やっぱり原画を見ると違う、と一番強く感じたのは食べ物の絵だった。
おなかがすいていたせいもあってか、
食べ物が描かれている絵の前の滞在時間は、ついつい長くなっていた。

(*赤い字の部分をクリックすると、渚さんのページへジャンプします)