小川洋子さんの『博士の愛した数式』をついに読んだ。
中央線で最初のページを開いてから、吸い込まれるように読み進み
帰りの電車が自分の降りる駅に着いてしまうのが惜しかった。
夜にソファで続きを開き、
雨の音をバックにどんどん進み、
クライマックスに向かう途中ではっと目がとまった。
ルートの誕生日は、9月11日。
読んでいたこの日の日付も、まさに、9月11日。
911という数字にはひとつの大きな意味が与えられたが
別の輪が911という数字を通って回っているのを見た。
それも、ほかにもたくさんある輪のうちの一つでしかない。
博士とのやりとりを読みながら、
作品の世界を思い浮かべるのともうひとつ平行して
高校のときの数学の先生を思い出した。作品の世界を思い浮かべるのともうひとつ平行して
数学の美しさを語り、証明の美しさを語り、
難しい問題は「これは少しく悩ましい」と言いながら深緑の黒板に、几帳面でチャーミングな傾いた字で
白いチョークで見事な解法を展開していく後ろ姿。「理に至る」という、
まさに数学者にぴったりの名前の先生は
お元気でいらっしゃるだろうか。