ご近所の一輪車ガールズが、
ついに傷だらけアザだらけを脱出した。
日曜の夕方、
わくわくしたような、ちょっとうわずったような声で
今度はサザエさんの替え歌で景気をつけながら、
手すりを離して 一こぎ、二こぎ、三、四、五、六……
二人の興奮は高まり、 歌の中では
ドラ猫がサザエさんを追いかけるどころか
のび太くんがドラえもんを追いかけ始める。
自分がペダルをこがないで見守る番のときには、きれいな裏声で
みんなが笑ってるー わっはっは
子犬も笑ってるー (・)ワンワン
絶妙な休符を入れる感覚がすばらしい。
「できろ!」と
お互いに、そして自分にもおまじないをかけて
初めはペダル毎にぎくぎく、次第にすいすい進み始める二人。
自分たちだけの間で通用する、そんな動詞活用が懐かしい。
二人の脇には、
こないだまで自動車型のおもちゃにまたがっていたちっちゃな妹が
補助輪つきの自転車を乗り回す姿があった。