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2010年12月16日木曜日

「見てくれなかったなあ~」

松涛の路上で、斜め前を歩いていた小2くらいの男の子がひとり、
大きな声で

「あ~あ、オレの逆ランドセル、
誰も見てくれなかったなあ~」

見れば、ランドセルを上下逆に背負っている。

あ、 
と、男の子の視線と私の視線が交差したので
 (なぜ振り返ったんだろう、あの子は。
 と考えてみて、今日はブーツを履いていたので
 靴音で気がついたらしいことに思い当たった)

「おもしろいこと、かんがえたね」

と声をかけてみたら、

「おもしろくなんか、ないよ。
ただ、逆にしょってるだけ。
あと、上にカサもさしたけどね。」

たしかに、うなじの辺りにきているランドセルの底部には
閉じてきちんと巻かれた傘が一文字につきささっている。
 (いま、その仕組みを考えてみると、
 べろんとしたフタ部分を留める金具部分と
 ランドセル本体の間にできる隙間を利用したのだろう)

「誰か、見てくれないかなあ」ではなくて
「誰も、見てくれなかったなあ~」というのが、巧いなあ。

2010年12月4日土曜日

世界を相手にする話

道を歩いていて、二人連れとすれ違うときに
耳をすましているわけでもないのに
こぼれ聞こえてくる会話のかけらがある。

先日、ついキャッチしてしまい、気になったかけらは
散歩中の老夫婦(と見えた二人連れ)の、おじいさんの方のことば。

「でもあれじゃ、世界には、通用しないよなア」



2010年8月12日木曜日

ジェリービーンズ

夕方、近いのに普段あまり通らない道を歩いたら

古くからある平屋のおうちの庭先に物干しがあって、
そこにジェリービーンズみたいにカラフルな洗濯ばさみが。
どんよりした曇り空に、ぱっと映えて見えた。

若い家族が越してきたのか。
おばあちゃんがカラフルな洗濯ばさみを使っているのか。
どちらにしても、楽しい。




2010年8月2日月曜日

めぐり

先日の「求人広告」は、すでになくなっていた。
きっとすぐ定員に達したのだろう。ひろくなった保育園は賑やかさを増したことだろう。
ときは、着実にすすんでいる。
民家の庭で咲く、さるすべりの紅色が鮮やか。

2010年6月26日土曜日

「おれたちの勝ちだ」

市の図書館の隣に小学校があり、一年生の下校時刻に行きあたった。
蜘蛛の子を散らすように、という表現を思い出し、
あーあぶない、車に気をつけて、なんてひやひやしながら歩いていた。

と、蛍光きみどり色の「学童安全」ランドセルカバーをつけた
ちっちゃな男の子たちの一団のなかから、だれかが高らかに声をあげた。

―おれたちの勝ちだ!

サッカー?と思ったら、どうやら違う。

なんだなんだ、と興味津々で取り囲むともだち。
その子は、ちょっとばかり誇らしげに、重大な秘密をもらすように、

―オレな、こないだな…


もったいぶる。


―ランドセルのカバーをとって、くしゃくしゃにまるめてやったんだ!

おおおおおお……

2010年6月16日水曜日

海の近くって

蒸し暑い昼下がり、
お昼休みを終えて職場に戻りがけの上下桜色の制服をきた女性がふたり歩いてきて、
ちょうど青にかわったばかりの横断歩道をわたり、
赤のときから待っていたわたしは一歩出遅れて、

しばらく、わたしはふたりの後を歩くような格好になった。

暑さのせいか、しばし沈黙があってから、ひとりがおもむろに口を開いた。

-海の近くって、こんな風に湿気て暑いよね。

-そうだね。湿気て、暑いよね、海の近く。
 なんかさ、そう言ったら、海に来たわけでもないのに、ちょっと楽しくなってくるね。

2010年3月8日月曜日

ビバメモライフ

るみちゃんとのやり取りで、
「ビバメモライフ」ということになった。

アイディアはメモしておくに限る。

兼田言子さんの「髪を洗っているときにひらめきが生まれることが多い」
という気づきには、深く同感。
「書き留められないから忘れないように注意が必要」ということにも。
 (彼女の写真も、添えられた文章も、とてもいい。)

メモは簡潔な方がいいけれど、あまりにも短すぎると、
それを頼りに記憶を掘り起こそうとしても、
何を考えてそれを書いたのかさっぱりわからないこともある。

たとえば、机の棚に貼ってある小さなポスト・イットの「メドゥーサ」。
「メドゥーサ」と書いたときに、
なんだったか、「!」と思って書いたことだけは覚えているのに。

2010年3月4日木曜日

大正マリー

「チョイス」の箱に
Since 1937 と書いてあってその古い歴史にびっくりし、

「マリービスケット」の箱を見たら
Since 1923 !

大正時代からあるビスケットだったとは。
ハイカラマリー、大正マリー。

2010年2月28日日曜日

明日は満月


雨戸を閉めようとしたら、
まるくて明るい月が目に飛び込んできた。
わ、満月!

と思いきや、満月は、あす3月1日でした。
明晩も晴れますように。

2010年2月25日木曜日

待っているパンダ


今日はこどもたちが遊びにこないな。


と、公園で待っているパンダのように、
目下わたしが取り組んでいる論文の中身も
日に焼けながら、砂をかぶりながら、

早く書いてくれよと思っているのかもしれない。

2010年2月24日水曜日

自家製干し椎茸

よそのお宅の庭先をのぞいているわけではないけれど
歩きながら何気なく目を向けた拍子に、見えてしまった。

水色プラスチックでできた、
洗濯ばさみが四列くらいずらりと並んだ洗濯干しが二つかけてあって、

そこに規則正しく干されていたのは洗濯ものではなくて、
黒っぽくて小さくて丸みをおびた、あれはまちがいなく、椎茸。

通りすがりの猫にも、おなかを空かせた鳥たちにも狙われることなく
ぎゅっと味の凝縮された干し椎茸ができることだろう。

2010年2月23日火曜日

二人三脚になるかならぬか

角を曲がったら、
小学生の女の子ふたりの楽しげな笑い声に出会った。
ふふふと笑いながら歩く二人の後ろから、
お母さんが笑顔で見守っている。笑顔が三つ進む。

ふたりは、双子。
髪は同じように二つ分けで元気に結ってもらって
白い上着、ジーンズに、ピンクの靴のいでたちもお揃い。

いち、に、いち、に、 
たたたたったた ふふふ

きゃー待って、 たたた たたったた 合った、

いち、に、いち、に。 
たたたたたたったた ふふふふふ

もう一回、 えーと、たた た たたたた 

いち、に、いち、に。ふふふ

一人は、姉妹ふたりで二人三脚の状態にしようと足並みを合わせ、
もう一人は、わざとリズムを乱して足並みをばらけさせようとして、

いち、に、いち、に。 たたた た たた ふふふふ 待ってー
の繰り返し。

楽しそうな二人を見守るやさしい視線と目が合って、
かわいいですね、と笑顔を返した。

2009年10月14日水曜日

びくり首

ぴきっ という感触、いやな予感。
これも寝違えというのだろうか、起き上がるまさにその瞬間に
情けないほど派手に首の筋を違えた。

ほぼ丸二日間、冗談のように首がまわらなかった。
別の方向を見るためには、
目だけをギョロ と動かすか、体ごと向きを変えるか。


「家庭医学大全」をめくったら「50肩」の項が目に入った。

「(前略)

帯を結んだり、髪を結ったりする動作のときに痛みを感じ

(後略) 」


刊行は昭和61年。当時の40代、50代は和装が主流だった???

2009年9月17日木曜日

車道の色どり

初夏のこと。フランスから初めて日本に旅行に来たトマに、
「日本にはどうして、白い車が多いの?」
と聞かれた。

え、白い車が多い?

そのときはピンと来なかったものの、夏の終わりに成田からバスに乗ったときに
そういえば、と思い出して見てみたら、確かに白い車がたくさん走っていた。
(白の他に、メタリックのグレーのような色も多い。)

あまり車に興味があるほうではないが
おぼろげな記憶を辿ってみれば、
メキシコではあまり真っ白な車を見なかったように思う。

白は汚れやすそうなのに、何故人気なんだろうか?

ノルウェーのある港町では、赤い車が多かった。
霧がかかったり、薄暗い曇り空だったりということが多いので
鮮やかな方がいいから、ということらしい。
これはわかりやすい。

日本の(あるいは東京付近の)白は?

2009年7月8日水曜日

へた栽培

にんじんのへたから、爽やかな緑色の葉が出ている。

切り落としたオレンジ色のへたは、
すぐに生ごみとなるはずだった。が、


「水栽培できるんだよ」
と言われてちょっと試してみたくなり、
積み木のできそこないみたいなそれを、
うすく水をはった容器に入れた。


数日すると、そっけなかった「へた」の頭から、
はえ始めた「吾子の歯」を思わせるような
芽のきっかけみたいなものが出てきた。

伸びること、伸びること。

すてるつもりで、できるだけ短く切り落とした「へた」に
これほどの栄養分がつまっているとは。

ぐんと伸びた茎の先についた中心の葉のほかに、脇をかざる葉まで出てきた。
土に埋めたい。
けれど、考えてみれば、根はとっくのとうに食べてしまったのだった。

さて。

2009年4月21日火曜日

雨宿り

雨の降り出した午後。

野菜販売の無人スタンド脇を通りかかり、少し歩調を緩めた。
何か売っているかな、と覗き込むと、そこには、油揚げ色した日本猫の後姿が。
ふつうなら野菜の並ぶカゴの上に、ゆったり座って雨宿りしていた。

2009年3月21日土曜日

サウスポー

午後に駅へ向かう途中、歩く私の背後から、

「ターラーラーララ ララーラー ラララ ラーララーララーラー…」

自転車に乗った、50代半ばくらいのご夫婦が通り過ぎた。

奥さんが、歌詞もなく口ずさんでいた、あのメロディーは……
「背番号1のすごい奴が相手~♪」

ピンクレディー?なぜ?
一瞬きつねにつままれたような気分になったが、まもなく納得。

きっと春のセンバツを一試合見終わってから、
夫婦一緒に外へ出たところだったんだろう。
春だ。

2009年2月6日金曜日

犬のウィンク

ゴールデン・レトリバーのミッツィーがダイエットに成功している。

家主のセシリアたちがカナダに移住するというので
飛行機のペット用重量制限「ケージを入れて45kg」内に収まるべく
数ヶ月前から、涙ぐましい努力が続いている。

ミッツィーは、器量よしだが
散歩に出れば「かわいいね」と「こりゃ太っちょだね」の両方の声がかかるくらい
誰が見ても、重量オーバーだった。

それが今や、ウェストの辺りがすっかり変身、
「ぽってり」ではなく「すっきり」という形容が似合うようになった。

それでも食欲が減ったわけではなく、相変わらず
料理のにおいを嗅ぎつけるとタッタッタと台所にやってきて、
これでもかというくらい可愛い顔をして、食べ物をねだられる。

今朝は、小麦粉のトルティージャにチーズをはさんで温めたのを食べていたら
みっちゃんがふかふか登場、
台所の木製ベンチに顔を載せて首をかしげたと思ったら、片目をぱちり。

2008年1月27日日曜日

苺と娘

                  (2004年7月撮影)

苺はもともと春から初夏にかけての果物だと思っていたら

ノルウェーでは7月が旬だった。
果物屋の屋台がたちならぶ広場の脇の階段に、
誰かがさっそく食べたあとがあった。
すぐに食べたくなるのも無理ない。だってこんなに美味しそう。


苺といえば、あまずっぱくて可愛らしくて、
新品種の名前にしても"若い娘さん"というイメージがつよいのに
なぜ「草かんむりに母」なのかと思って考えていたら、
よくできた象形文字に見えてきた。

先日、南武線で小さな女の子とお母さんの可愛らしい会話を聞いた。
大きな駅で、たくさんの人が乗り込んできたのを見て
「わあ、こんなにいっぱい、電車さんおもくないかな、だいじょうぶかな?」
「たくさんごはんを食べてるから、大丈夫よ」
「そうかあ………。電車さんはなにをたべるの?……いちご?」

あの子は、苺を食べたら嬉しくて元気が出るのかもしれない。

2008年1月13日日曜日

失礼ですが…

先日、夜の電車で面白いことがあった。
久しぶりに会う友だちと大勢で美味しいものを食べた帰り道、

電車でもメキシコ人のホセとスペイン語日本語とりまぜてお喋りし、
途中の駅でホセをじゃあねと送り出してしばらくすると、
たまたま乗り合わせたおじいさんに声をかけられた。
「失礼ですが、さっきお話していたことばは…スペイン語ですか?」
聞けば、その方はお仕事でパリに三年ほど暮らしたことがあり、
今も外国語に興味があるとのこと。
三年前に亡くなった奥さまは、日本語の教員をなさっていたそうだ。
降りるまで一駅ちょっとの間だったけれど、思い出話や外国語の話など、
さっぱりとして温かみのある口調で話してくれた。

その方が降りた後も、なんだかあたたかい気分が続き、
自分の駅では階段を降りる足取りも軽く、家までうきうきと歩いて帰った。