大きな声で
「あ~あ、オレの逆ランドセル、
誰も見てくれなかったなあ~」
見れば、ランドセルを上下逆に背負っている。
あ、
と、男の子の視線と私の視線が交差したので
(なぜ振り返ったんだろう、あの子は。
と考えてみて、今日はブーツを履いていたので
靴音で気がついたらしいことに思い当たった)
「おもしろいこと、かんがえたね」
と声をかけてみたら、
「おもしろくなんか、ないよ。
ただ、逆にしょってるだけ。
あと、上にカサもさしたけどね。」
たしかに、うなじの辺りにきているランドセルの底部には
閉じてきちんと巻かれた傘が一文字につきささっている。
(いま、その仕組みを考えてみると、
べろんとしたフタ部分を留める金具部分と
ランドセル本体の間にできる隙間を利用したのだろう)
「誰か、見てくれないかなあ」ではなくて
「誰も、見てくれなかったなあ~」というのが、巧いなあ。