2010年12月25日土曜日

『ゴッドスター』

古川日出男さんの中編小説『ゴッドスター』は、
今年の「新刊」ではないけれど今年文庫化されたもので、
新しく出た本のなかで私が読むことのできた、数少ない本の一冊です。
というか、
本当は「面白いもの断ち」をしていたはずの時期に
つい買ってしまい、つい読み始めてしまい、
ぐいぐい引き込まれて、途中で閉じることができなかった本です。

私の記憶が確かであれば、
「この小説に解釈はいらない」と著者が語っていたそうですが、

それはきっと、『ゴッドスター』が
読者をひとつの体験に巻き込むような種類の小説だということなのだろうと思います。

「体験に巻き込む」というのは、

読んでいる私が、主人公と一緒になって
聞いているはずのに聞こえていない音に耳をすまし
見ているはずなのに見えていないものに目を向け
そのなかで毎日生きているはずなのに、よく考えてもみなかった仕組みについて考えるように
一つ一つの動作、一つ一つのことばを丁寧に捉えなおすように
自然に仕向けられていて、

そうして感度を高められる読者=私の感覚は、
小説のなかの世界に対してのみ有効であるというわけではなくて、
読んでいるときに自分が居る部屋の空間のなかにも、部屋の外に広がる世界にも向けられて、
それどころか、読み終わった後にも、
その感覚が鋭くなったままである、というようなこと。

その意味では、
一般的な小説よりも、詩に近いような本であるようにも思います。