電車のなかでめくった文庫本の一枚のページから
しんと冷える夜、体を縮めて横になり
濃紺の空にちら、きら、と輝く星は相変わらずきれいだが、
しかし寒い、
風がおさまったままでいてほしい、
寒い寒い、と
隣にいる痩せたいきもののぬくもりに寄り添う心持ちを想像した。
「ヒトが間に入って眠るのには、ヒツジの方がヤギより冷たい。
なぜなら、ヤギの方が身動きしないし、ヒトの方へ寄ってくるからである。
ヤギはヒツジより寒さに耐えられないのである。」
アリストテレース『動物誌』 (下) 第三章 「ヒツジやヤギの習性と知能」
島崎三郎訳、岩波文庫、1999年、121頁。