2007年8月9日木曜日

文字とことばがつながるとき

ラッシュの終わった頃の朝の電車にて。

4歳くらいの女の子と、60歳近くに見える通勤途中の…お祖父さん?
女の子は、男性が広げていた日経新聞をのぞきこみ、
ひらがなだけ拾って読み始めた。
そのうち、意味のある音の並びがきこえる。

「ふ」「さ」「わ」「し」「い」

うーん…ふさわしい、って読めても、ぴんとこないだろうな。
男性は一計を案じたようだ。自分の携帯電話を取り出し、
女の子にとって意味のある言葉を、
ひらがなで入力して見せている。

「し」 「ぶ」 「や」 「しぶや!」
女の子の顔がぱっと明るくなる。
「つぎ、しぶやにつく?」
居眠りしていた乗客が「え、もう渋谷」とキョロキョロ。
まだ明大前。
そこで男性、到着時間も計算した上で
今度は別の駅名を入力。

「し」「も」「き」「た」「じゃ」「わ」
「しもきたざわだよ。」
「しもきたじゃわって、なあに?」
「次の駅だよ。ほら」
アナウンス:「次は~下北沢、下北沢」
「ほんとだ!」
「ね。」
文字とことばがつながる驚き、喜びの光景を前にして、
読もうとしていた本の内容がちっとも頭に入らなかったのは言うまでもない。

       (2007年6月6日)