ある朝のこと。
大学へ行こうとぺセロ(乗り合いバス)に乗りこみ、発車を待っていた。
ふと見ると、
斜め前の座席の背に、小さな虹のかけらがたくさん。
どこから?と探すと、すぐ近くに虹のもとが見つかった。
隣の席にいるおばさんの黒い上着に、
グリンピースより小さいくらいの、
丸やひし形や正方形の、たくさんの銀色の飾りがついている。
そこにメキシコの強い陽の光があたって、
小さな虹がばらまかれていた。
「虹をつれてますね」と言うと、
「あら、ほんと」。
自分の上着を見て、虹のかけらを見て、
興味深そうにしている。
バスが動き出して光の向きも変わり、
私の前の席に虹が来た。
持っていた紙で虹を拾うと、
「あなたの顔にもうつってるわよ」
私が降りるとき、おばさんは声をかけてくれた。
「またね、気をつけて」
私の顔にうつった虹は、
バスを降りたら消えてしまった。残念。
おばさんはあの後、虹を連れてどこまで行ったのだろう。