近所の秋
実より先に真っ赤になって地面に着いた柿の葉
家の近所には意外にたくさん畑が残っている。野菜畑に果樹畑。木の枝に、見慣れないごつごつした実が見えて、なんだ?と思ったら花梨の実。「かりんかー」と頭の中でつぶやいたら、即座にスラヴ的なメロディーが響きだした。カカリンカカヤ、といくらか勇ましく歩いていたら、畑と雑木林だったはずの大きな一区画が がらん と広がって、切り株がさびしく並んでいる。腰に手を当てて遠巻きに眺めているおばあさんに声をかけてみた。「お母さんとお父さんが亡くなったからねえ、息子さんは歯医者でしょう? だから畑やってないし、贈与税がほら、高いからねえ。財産があるのも、大変だよねえ。」枯葉をかさかさ踏みながら歩いていて、思った。命を終えて落ちた葉なのに、なんでこんなにいい香りがするんだろう。