「嫌い嫌いも好きのうち!大丈夫だよ!」
昼下がりの電車のホームで、
閉まりかけたドアに向かって大学生男子が叫んでいた。
その電車にゴトゴト運ばれていった彼のともだちがどんな状況にあるのか、
果たしてほんとうに「大丈夫」なのかは、想像するしかない。
「嫌い嫌い…」は「ことわざ」とは言わないのかもしれないが、
「ことわざ」と呼ばれるものには
「急がば回れ」のように教訓的なものや、
「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」のように「あるある!」というもの、
「暖簾に腕押し」のように、ある状況を巧妙に表現したものなど
かなりのヴァリエーションがあり、
強いてまとめるとすれば、
「技アリ」というようなうまい言い方故に、長く残っている表現というところか。
夜の電車に揺られながら、
ことわざにはどんなのがあったっけなと考えていたら、
あることわざの「技」に初めて気づいた。
「蛙の子は蛙」。
なんで蛙?と思ったことが以前にもあった。
だって、蛙の子は、おたまじゃくし。
あ、そうか!
はじめは「俺はおたまじゃくしだ!」と思っていたおたまじゃくしも
いつかある日……。