2008年9月22日月曜日

仕事を見つけるまでの間

バスの中にも、物を売りに乗ってくる人たちがいる。
お菓子だったり、アイスキャンディーだったり、電池だったり。
運転手さんに許可を得て乗り込み、売り、ありがとうと言って降りていく。

今朝見た人は、いつもと少し違った。
髪を短く刈った、若い男の人。

スーパーで売っているような飴の袋の口を開いて、両手で持っている。

少し小さめの声で、話し始めた。

「ご迷惑かもしれませんが、飴を売りに来ました。
 実は、わたしは刑務所から出てきたばかりです。
 盗みをはたらいて、捕まったのです。
 
 以前は、いつも安易な道をさがしていました。
 その結果、刑務所へ行くことになったのです。
 そして楽に生きる道をさがすことのおろかさを知りました。
 
 こうして出てきて、仕事を見つけるまでの間
 私は飴を売ろうと決めました。
  
 この飴には決まった値段はありません。
 助けを貸してくださる方があれば、
 よろしくお願いします。」

前の席のおじさんが大きな硬貨をポケットから出し、
ひょいと手で合図をした。
少し考えて、私も飴をひとつ買った。
ほかの席からも、合図が起こった。

治安改善策を要請する声が高まる今。
あちこちの席から手渡される硬貨には、
この心が広まるように、という祈りのようなものがこもっているようだった。