夕暮れのアヴィニョンを後にし、
ローマ時代の水道橋Pont du Gardに向かう。
まだ間に合うかな…と時刻を気にしながら
「Pont du Gard」の標識をたどっていくと、
先行する車は次々に別の方向に曲がっていく。
道が空いてて走りやすいけど、これはよくないしるしだね、
と心配そうな運転席のソレーヌ。
対向車すら通らない1台だけのドライブが続く。
空の色合いも寂しくなったころ入り口に着き、駐車場のゲートに進むと、
開いた!よかった、間に合った。
昼間は込み合うに違いないこの駐車場に、
車はもう4、5台しかとまっていない。
うち1台は、ドイツナンバーのキャンピングカー。
そういえばフランスでもキャンピングカーの旅がはやっていると聞いた。
空気も肌寒く感じ、
足元の照明に静かに照らされた道を足早に進むと、
奥からドイツ語が聞こえてきた。きっと、あの車の人たちだ。
ふっと左手を見上げると、月夜に浮かぶ橋!
こんな立派な橋が当然のような顔をして
二千年以上の時間を越えて立っているのを見ると
なんだか狐につままれたような気分になる。
聞こえるのは、虫の音と、
自分には意味の理解できない言語と、
ドイツの人たちのデジタルカメラの操作音、
空には月、
もっと低い空には橋をうつしだすデジカメの液晶画面が光っていた。
この川の眺めが好きなんだ、と言うソレーヌと一緒に
立ち止まってガルドン川をしばらく見てから、
がらんとしたカフェスペースに置かれた銀色の椅子の間を抜けて
機械に駐車券を差し込んで料金を払い、車に乗り込んだ。
アルヴァールを出てからまだ半日しか経っていないのに
大旅行をした気分。
クレストのお昼の残りのサラミ(辛いのと、普通のと)をかじりながら
ソレーヌの母イザベルさんの待つモンペリエまで、
今度は高速道路に乗った。