「城砦のある小さな町、行ってみたい?
私の大好きなお菓子屋さんがあるんだ」
もちろん!
ということで、モンペリエの町からの出口を車でぐるぐる探し、
しばらく走って、Aigues-Mortesへ。
石畳の、きれいな町。
観光客、特にきれいな白い髪のお年寄りの姿が目につく。
お店が立ち並ぶ通りの右手に、なんだか一際きれいな店がある。
「ここ、ここ」
キャンディーにチョコレート、ヌガー、クッキー…
いろとりどりのお菓子が整然と魅力的に並んでいる。
お父さんに肩車されたこどもが目をキラキラさせていた。
「カントリーマアム」大のチョコクッキーの試食をすすめてくれたおばさんに
「写真に撮ってもいいですか?」と聞くと、
どうぞ、とにっこり笑顔で答えてくれた。
ヌガーの色合いとお店全体の雰囲気が合って、洒落ている。
ジンジャー入り、オレンジピール、苺、イチジク、ピスタチオ…
贈り物用に包装されている詰め合わせの、包み紙とリボンの配色も
しびれるほど洒落ていたが、見とれただけで写真を撮るのを忘れた。
朝顔に囲まれたお店。
鉄柵の深緑、これが好き。
公園のベンチなどにもよくこの深緑が使われ、景色に溶け込んでいる。
古本屋さん。
旅がまだまだ続くのでなかったら、
古い本のページに水彩で絵を描く渚itaに、
一冊買っていきたいところだった。
昼食後のおしゃべりを終えたばかりの、おじいさん。
仲間に挨拶をした後、家の中へ消えていった。
鮮やかな赤いセーターがきれい。
深緑の椅子の上には、
南仏模様のクッション(座布団?)二枚。
座るときには、片方を背もたれに当てるのか、二枚の上に座るのか。
これもまた色合いがきれい。
私にとって、この町はすっかりお菓子と色彩りの町になってしまったが
歴史をたどってみれば、ルイ9世が十字軍遠征のときに建てた場所。
けれども宗教色が強いという感じではなく、
ここの教会は至って簡素なつくりで、
ステンドグラスも何かの物語を描いたものではない
シンプルな「色模様」だった。
Aigues-mortesという名前も気になる。
Aigueは古フランス語の「水」から、
mort(es)は現代フランス語の語義と同じだとすれば英語でdeadで
例えばla mer Morteだと「死海」、langue morteだと「死語」。
Aigues-mortesは「死水」? しかも、なぜ複数形なのだろう。