6月ごろから、万年筆を使い始めた。
それから少し遡り、まだ肌寒かったある夜のこと。
渋谷のスペイン料理屋に小人数で集まったとき、
「上着をお預かりしましょう」と言われた旦敬介さんが、
店員さんに上着を渡す前に何かを取り出し、手元に留めた。
万年筆。
ああ、さすが、書く人escritor。
高校からの友だち、ちひろが六月の花嫁になったとき、
ギフトカタログを眺めていて、はっと目に留まったのが、万年筆。
赤ワイン色のPlatinumを頼んだ。
大切なときだけに使うようにしていたら、
付属のインクがしばらくもって、
それが先日とうとう切れた。
インクが高そうという変な先入観があっておそるおそる買いに行ったら、
400円でカートリッジが10本も入っている。
万年筆は別に贅沢品じゃないんだ、
大切に長く使える筆記具なんだと思うと
なんだか嬉しくなって、急にたくさん万年筆の文字を書き始めた。
キーボードにも使い捨てのペンにも鉛筆にもお世話になっているけれど、
万年筆で書くと、書いている文字も中身も丁寧になる気がする。
本筋からは逸れるけれど、万年筆はアルファベットの筆記体が書きやすい。