メキシコの詩人・文人、アリ・チュマセーロ が亡くなりました(1918- 2010)。
Fondo de Cultura Económica 版の、
ビジャウルティア作品集の編集にも携わり、序文を寄せている人物でもありました
(しかも、最近では待ち望まれる第二巻の編集を進めていたそうです)。
彼の詩が読める本で、版を重ねているために手に入りやすいものには、
チュマセーロ自身が、オクタビオ・パスらと共に編纂したアンソロジー
Poesía en Movimiento (México 1915- 1966)Siglo XXI editores, 1966
があります。
そこに収められた詩から、一篇を試訳してみます。
風がさかまく海となるよりも前、
夜がその喪服を自分の身につなぐよりも前
そして星々と月が、空の上で
天体の白さの場所を定める前に。
光が、影が、そして山が
それぞれの頂の魂が昇りたつのを見る前に、
空気の下で何かが漂うよりも先に、
始まり よりも前のときに。
まだ希望がうまれていなかったとき
天使たちがそのきっぱりとした白さで彷徨ってもいなかったとき、
水が、神の知にすら含まれていなかったときに、
前に、前に、ずっと前に。
まだ小路に花々もなかったとき
それは 小路でもなく 花々もなかったからだけど、
空が青でなく蟻たちが赤でもなかったとき、
もう私たちは、あなたと私だった。
("Poema de amorosa raíz", Páramo de sueños (1944)
en Poesía en movimiento, pp. 215-216.)
詩人本人による朗読映像も、以下のページより見られます。
映像からすると、近年の録画のようで、ゆっくりした調子で読まれています。
この詩を書いた1940年代には、どんな調子で読んでいたのかも、
気になるところです。