2010年1月10日日曜日

言葉に編み上げ、人に語る

管啓次郎さんの新刊 『斜線の旅』(インスクリプト、2009.12.25)に
深呼吸をしたくなるような一ページを読んだ。

「あ!そうなのか」というよりもむしろ、
「やはり、そうだ」という部分の多かった、共振の一ページ。

その前半も素晴らしいのだが、敢えて後半だけに絞って引用したい。



「驚くべきことをまのあたりにした人は、その事件を言葉に編み上げ、人に語るべきだと思う。
目が覚めるような話を耳にした人は、その話を中継し、さらに語り直すべきだ。
その連鎖には、もちろん数々の嘘や誤解がつけいることだろう。
しかし少なくとも連鎖を続けてゆくこと、とぎれさせないこと、最終ヴァージョンの存在を許さないことが、
人々の興味を対象につなぎとめ、つねに新たな見方や思いがけない知識を呼びこむことになる。
究極的には、人があるときある場所にいるということは、それだけで途方もない偶然であり、
あらゆる展開につながってゆく稜線の小径なのだと思う。」(「湖とハリケーン」、『斜線の旅』 27ページ)



ここ10年間の自分を振り返り、
これからの10年に対する背筋が伸びる。