お好み焼きの具と生地の入った器は、
ぎりぎりの大きさで、あふれてしまいそうで、混ぜるのに一苦労。
「だいじょうぶ、できる? まぜてあげようか。」
「すみません、お願いします」
渡すと、お店のおばさんは、
器の底の一点を鉄板にコツンと当てるようにして、力強く生地を混ぜ始めた。
なるほど、これなら、もしこぼれても大丈夫。
混ぜること、混ぜること。額には玉の汗。鉄板はじりじり熱し続けている。
「いまはまだいいけど、夏は暑くて暑くて。
夏は、お客さんに、食べる方になりたいわって思うのよ。」
「またお好み焼きが、冷たいビールにあうんですよね。」と、舞ちゃん。
自分の頭のなかでは、なぜか甲子園の映像が流れている。
ビールに執着がないからか、夏とお祭り気分と関西からの連想で、きっとそうなったのだろう。
おばさんは頃合をみはからって、またひょいと顔を出し、焼き加減を指南してくれた。
美味しく食べ終わって、
エドゥがヘラをあやつって鉄板から焦げ残りを落としていると、
それを目にしたおばさんの顔がぱっと嬉しそうになり、
そして、声をかけられた厨房からもうひとり、嬉しそうな顔がのぞいた。
「きれいにしてくれて、ありがとうね。」
こちらこそ、美味しいお好み焼きとやきそばと、
そして暖かいもてなしを、ありがとうございました。