年末のこと。
メキシコ市の Museo del Papalote パパロテ-こども博物館で開催していた
企画展 Diálgo en silencio -comunicación no verbal -
(しずかな会話-非言語コミュニケーション)に行った。
入場する前に、スタッフから説明があった。
これから先、音もことばも、一切なくなります。
耳の代わりをするのは、あなたの目。
ガイドの指示を よく気をつけて見ていてください。
「元気?」「元気です」「はい」「いいえ」「ありがとう」「さようなら」の手話を
一通り教えてもらった後に、ガイドのマウリシオさんが登場。
笑顔で挨拶。
彼は耳が聞こえない。
身振りと表情の説明にしたがって、遮音ヘッドホンを装着した。
まずはウォーミングアップ。
最初の部屋は、顔のギャラリー。
ぐるりと円を描いて並んだ枠の前に立ち、
上下にスライドする枠を自分の顔の高さにあわせて、ライトを点ける。
マウリシオさんを真似て、顔の体操、きれいな人に見とれてうっとりの真似…
真ん中に次々と現れる有名人の写真の表情の真似(舌を出すアインシュタインも) 、
怖い犬や、きれいな花などの写真を見て、リアクションを表現してみる、など。
次の部屋では、手でつくる影絵の部屋。
見よう見まねで、パネルに手を当てる。すると…
パシャ!フラッシュが光り、手でつくった形が影に残る。
犬、鳥、ハートの形……。
基本が終わると、ゲームにうつる。
はじめはこんな具合。
まるく並んだ座席の後ろには、
「嬉しい」「悲しい」「眠い」「怒っている」「驚いた」「おののいた」などの形容詞。
マウリシオさんの表情を見て、それがどれかを当てる。
続いて、今度は自分が引いたカードを見て、
「眠い」を表現したり、「嬉しい」をやったりして当ててもらう。
次の部屋では、ジェスチャーゲーム。
外套、消火器、犬、鳥などの言葉の書いたカード一組が座席に置いてある。
指名された人が、中央にある札をひく。
「寒くて寒くてたまらない、物乞いの人」と書いてあり、それをジェスチャーで表現すると
それを見てぴんと来た人が手を挙げて、「外套」のカードを示す。
そして、神経衰弱のようなゲーム。
くるりと反転する仕組みになっているパネルが縦横16枚ほど。
体のパーツの写真が表にあり、裏側には、それを表す手話の写真。
髪、眉、目、鼻、口、耳、首、腕、胸、へそ、、、
パネルを裏返しながら全部の説明が終わると、
手元のカードをつかって、どの手話がどのパーツかを、砂時計の時間内にできる限りあてる。
その後には、
館内にしつらえられた小さな店で、声を出さずにものを買うという実践篇や
タッチパネルを使って、自転車、車、バス、飛行機、などの交通機関に関わる語彙を学ぶという
三択式の自習用教材もあった(実際に使われているものなのだろうか?)。
けれど、上に書いてきたような「ミニ訓練」の部分が面白かった。
表現することにおいても、理解することにおいても、
非言語コミュニケーションの場合には
音が使えるときと比べて何倍も工夫して、頭も体も顔もたくさん使わないといけない。
伝えたい。わかりたい。
コミュニケーションの基本の基本を改めて意識した。