2009年3月17日火曜日

「降りますか?」

二十歳のころ。
初めての海外旅行で、パリのメトロに乗ったときに姉が教えてくれた。

次の駅で降りるからドアの前に行きたい、
けれど混んでいて行く手がふさがっているときには、前のひとに
Vous descendez? ( [次で] 降りますか?)と聞くんだよ。

そうすれば、まだ降りない場合には道をあけてくれるし、
そのひとも次で降りる場合は、
慌ててドアの前に行かなくても、続いて降りれば大丈夫ということになる。

メキシコでも、言語は違っても、同じように降りますか?と聞く。
(丁寧に Va a bajar? あるいはもっとくだけて Vas a bajar?)

先日、夕方の混んだ時間帯に、乗り慣れない東横線に乗った。
通勤特急というので一駅目で降りるのに、
乗り込んだドアのそばにスタンバイしていたら、降りるのは逆の方。

「ああ、逆だったか……」と体の向きを変えて、
ドアまで、どう人の間を縫っていくか、と目で追っていたら、
近くのひとたち二、三人が状況を察してくれたようで、
駅に着く前に、「通るんですね」、「はい、そうなんです、次で降ります」というような
無言の会話があった(ように思われた)。

電車がホームにすべりこんで、自分が実際にドアに向かいはじめたら
「すみません、降ります」と声をかける。(この場合、「降りますか」と違って「宣言」型だ)
けれど、その前に無言でおこなわれた視線のやりとりを、声に出してできたら……

その場合、日本語では何と言えばいいのだろう。
「降りますか?」は、少し不自然な感じがする。
英語では同じような表現があるのだろうか?韓国や中国では?

空気を読む文化も貴重かもしれないけれど、
東京のように膨大な数の人の移動する空間では特に、言葉でやりとりができたら便利だと思う。