「店じまいセール」の黄色い紙が、店内のあちこちに掲げてあるのが見えて
どきっとした。
ここは、年がら年じゅう「店じまいセール」をしているようなお店とは違う。
武蔵小金井駅の北口、「長崎屋」の三階に入っている小さな文房具店。
店主のおじさんは、
文房具が好きで、お客さんと話すのが好きで、
という感じのにじみでているようなかた。
移転するんですか?ときいてみたら、
ほんとうにお店をたたんでしまうんですよ、と。
40年、お店をやっていたからね、さびしいですよ。
近くに、売り場面積の大きな、
品ぞろえのいい文房具店が出店したから?
そのお店のはいっている新しくて大きい商業施設へ人の流れが向いてしまったから?
「なぜ」と聞いても、この場合には取り返しのつかないことだから、聞くのはやめた。
店じまいセールは、全品3割引き、利益はなし。
ただ、店にある文房具を、それを使って命をふきこむひとへ渡すだけ。
今すぐには必要でない替えインクも買ってみた。
レジに表示される合計金額の数字がぱっと下がるのを見て
なんだか申し訳ないような気分になる。
でも、どうせ買うならば、応援したいと思うお店で買いたい。
もう、取り返しはつかないのだけれど。
また、何か必要なものがあったら、来てくださいね。
店じまいセールは、今月の末まで。
それが終わったら、ほんとうの店じまい。
安いから買う、という行動パターンが
あちこちで、理不尽な事態を生んできた・生んでいるように思える。
巨大な仕組みを変える可能性があるのは
トップダウン式のやりかたよりも
むしろ、小さな動きの集積による、うねりの変化かもしれない。