メキシコで遭ったひったくり被害(2008年夏)についてしゃべる機会があった。
(しゃべる機会と言っても、公にではなく、ともだちとの会話のなかでのことで
両日とも、メキシコへ留学したときのともだちに会ったのだった)
ひったくりに遭ったときの状況について。
とられたものについて。
運悪く、ひとに借りていたものを二点も持っていて、
(デジカメと、貴重な雑誌)
それもとられてしまったこと。
私がかばんを取られまいと抵抗したために、ひどく蹴りをいれられたこと、
被害届を出しに警察に行ったときのこと、、、
日曜日、二回目にこのことをしゃべったときに、
前日は思い出さなかったあることを思い出した。
家に戻ると、
家主のセシリアの友達のおじさんが、
家の修繕をてつだいに来たらしく、玄関で作業をしていた。
「元気かい?」とお決まりの挨拶をされ、
がっくりしながら「まあまあです」と答え、
「実はこんなことがあって、、、
(中略)
あんな目に遭ったのは、初めてでした、、、」
と話すと、おじさんは言った。
「どんなことでも、初めてというのがあるからね。」
この話をしたら、留学時代のともだちは口を揃えて
「おお~、さすがメキシコだね!」
受け取りようによっては、
おじさんのコメントは皮肉にも聞こえるかもしれない。
でもそのことばを聞いて、当時の私は、確実に、力を取り戻した。
くよくよ考えずに、
自分が知らず知らずのうちに油断していたことを前向きに振り返って、
「二度目」には決して遭わないように暮らそう、という気になった。
私がメキシコに感じる魅力のひとつは、
あのおじさんの返事に凝縮されているようにも思える。
いやな目にあったり、つらい状況にたたされたりしても
それをひとまず受け入れた上で、先に進もうとする逞しさ、
とでも言ったらいいだろうか。
そのような逞しさを持ったひとたちは、
世界中に、そしてもちろん日本にもいるだろうし、
私は、たまたま、それをメキシコで強烈に感じただけなのだろうけれど。