2009年7月17日金曜日

メキシコ20世紀絵画展(世田谷美術館、8月30日まで)

先週末、世田谷美術館で開催されているメキシコ20世紀絵画展を見に行った。

メキシコの国立美術館で見たことのある絵もあったけれど、
なかなか普通では見られない作品も来ている。

展示は、

第一章:文明の受容 (歴史的事件、当事者; 愛国心の寓意)
第二章:文化の発信 (国内向け;国外向け)
第三章:進歩 (社会的側面;美的・様式的側面)

と三つのセクションに分かれている。

同じ作者の作品が複数のセクションに分かれていることもある。
気になった作者や作品があれば、
全部見終わってから、部屋を出る前にちょっとさかのぼって
入り口でもらうリストを頼りにしながら、その人の作風の変遷を見てみるのも面白い。

それから、ちょうどこの時代のことを調べていることもあって、
もっと説明があったら面白いだろうと思う事柄もある。

1910年、メキシコ革命が始まる。

1911年、美術学校で、古びたカリキュラムに反対してストが起こり、
 そこから、「野外美術学校」の試みが始まった。
 革新の意志と、外に飛び出したことから、印象派のようなスタイルで描くように。

1920年代は、さらに「印象派」からの脱却が模索される。(「印象派」的なものも、まだある。)
 
 革命後の制度化を進める政府に後押しされたのが、リベラ、シケイロス、オロスコらの壁画運動。
 政治性を帯びることを拒んだのが、ロサーノやタマヨ、アンヘルらのグループ。

 リベラらは国外でも有名になり、アメリカ合衆国でも壁画の制作や展覧会を重ねる。
 タマヨは、リベラらとは別の路線で制作を続けたが、ニューヨークで大活躍。
 

1940年、メキシコ市で「シュルレアリスム国際展」が開かれる。
メキシコの画家たちの中には、
その展覧会のためにシュルレアリスム風の絵をわざわざ描いた人もあったらしい。
 (オロスコ・ロメロの「夢」(1940)は、この口か?)

ほかに感じたこと。

アグスティン・ラソの絵が来ていない!

サトゥルニノ・エランの絵。
デッサンがしっかりして、筆致は「ヨーロッパ風」にも見える。
題材は、メキシコの「現実」を扱っている。
1920年以前に描かれた彼の作品と、
1920年代の二つのグループを比べると面白い。


北川民次の「花」がとてもいい。
メキシコと日本に共通する、どこかしみじみした感じが
滲み出ているように思った。