坂の町サンフランシスコの名物、ケーブルカー。発着点のPowell駅に降りてくると、線路から方向転換用の回転盤に車体を移し、人力でぐるりと方向転換して、また人力で線路に押し上げる。「研修中の車両 」が、なんだか「筋力トレーニング用車両」にも見える。
Stanford図書館二日目。今日は自転車を貸してもらい、行きも帰りもスイスイ。自動車が自転車や歩行者を大いに気遣ってくれるのが嬉しい。構内の木々の枝ぶりがなんだか気になる。端整で立体的、大型の盆栽みたい。気候や木の種類によるところもあるのだろうが、剪定の好みもあるのだろう。枝ぶりに見るお国柄、なんていうのも面白そうだ。木漏れ風からは、楓でもないのにメープルシロップのようないい香りがしてきて、つい、深呼吸。
本を探しに、サンフランシスコまで。Univ. StanfordのGreen図書館にはUNAMよりもメキシコ文学の本が揃っている…美術関係の本の書庫は「倉庫」という感じで書架を通り過ぎる毎に「カチ」「カチ」とセンサーで蛍光灯が灯り、気分がザワザワする。どこからか人の気配もする。
モスクワ大学に次いで広大というキャンパスには自転車が行き交っている。日本のシティサイクルとは違うけれど、たくさんの自転車が駐められているのを見てなんだか懐かしくなった。
ラジオの前から動けず、ただただ耳をすます、という経験をした。
フランスにいたときのある夜、眠りかけていたときにラジオから流れてきた音楽にぱっと目が覚め、
Maurice Vanderの名を書き取って以来のことだ。
台所に降りるつもりでいたそのとき、ラヴェルのボレロのヴォーカル版が流れてきたのだ。
一瞬ボロディンの「中央アジアの平原にて」かと思い、あれ?とわからなくなったけれど、トン、トトト、トン、トトト、ト・ト・ トン、トトト、トン、トトト、ト・ト・
いやいや、やっぱりこれはあの曲。メロディーだけでなくパーカッションの部分まで、声だけであの精緻な厚みが組み立てられていく。息を呑みながら最後まで聞き、誰が演奏しているのかと耳を澄ませたら何も言わないままに次の曲が始まってしまった。
一体誰なんだろう。