世界一美しいことば大賞というのがあるらしい。
晩秋の今、私が選ぶとしたら断然、hojarasca だ。
(hojarascaと言えばガルシア=マルケスの短編を思い出す人もいるだろうが、
それは今回の連想の外側にある。)
スペイン王立アカデミー編纂の辞書によれば、
第一義は 「木々から落ちた葉の総体」
hojarascaという語の発音をひらがなで再現するとすれば
「おはらすか」
「は」の部分は少しかすれた感じに、
「ら」の部分からフェイドアウトするように、
「す」の部分は、子音だけで発音する。
おはらすか。hojarasca.
木から、はらはらと落ちてくる秋色の葉、
ふと見ればその葉が吹き寄せられている様子、
地面に落ちた葉がかさかさと転がる音、
秋の冷たい空気までが、くっきりと想像される。
(しかも、東京の11月末には、そうしたイメージの本物が
歩いてゆく先に、目の前に、頬のすぐそばに、存在する。)
…とは言っても、スペイン語圏の人たちはおそらくhojarasca
ということばに美しさを感じることは少ないのではないか とも思う。
というのも、先ほどと同じ辞書によれば
第二義は「木や植物の、過度の、そして無益な茂り」
第三義は「無益で中身がほとんどないもの、特に、ことばや約束」
(葉が落ちるのは、冬のさらに先の春のためなのに、無益とは。)
それでも、ここ東京の西の端では、しばらくの間ひっそりと
おはらすかhojarascaを楽しんでいよう。