2年生と3年生の授業に、ゲスト・スピーカーをお招きした。
NGO<国境なきアーティストたち>代表の、エクトル・シエラさん。
コロンビアに生まれ、
旧ソ連留学時代にはセルゲイ・パラジャーノフ監督のもとで映画づくりを学び、
コソヴォ、東ティモール、アフガニスタン、9.11後のニューヨーク、など
武力紛争、衝突、衝撃的な事件を経験した土地に出向いて、
こどもたちを相手に、
絵を描く、折り紙を折る、などのワークショップを行ってきた方だ。
一方的に話をして聞かせるというのではなく、
学生ひとりひとりに質問を投げかけるチャンスを設け、
それぞれに対して丁寧に答えるという形で、少しずつ話をしてくださった。
その進め方に、なるほど、と思う。
それから、ご自身の活動の様子をまとめた映像を見せてもらった。
日本のこどもたち。ニューヨークのこどもたち。アフガニスタンのこどもたち。
映像のなかで、特に印象に残った場面が二つ。
ひとつ。
アフガニスタンの、女の子たちのクラスを担当する先生(若い女性)が、こう言った。
消しゴムやえんぴつは使ったら消えてなくなってしまうけれど
あなたたちが学んだことは、消えません。
家に帰ったら、もう一度練習してごらんなさい。
もうひとつ、こちらはもう少し複雑な思いをのこした場面。
アフガニスタンの、四歳から絨毯織りの仕事をずっとしていて、
学校に行く機会を持たずにいる女の子(八歳ぐらい?)が
将来の夢は何?と聞かれたときには
何も答えずに赤い糸を織り込みつづけ、
大きくなったら何をしたいかと聞かれたら、今度は目を輝かせて、こう答えた。
大きな絨毯を織りたい!
字幕を読んでまず思ったことは、この子も、もし学校に行ければ、
もっと可能性が広がるかもしれないのに、ということ。
けれど、大きな絨毯を織りたい!と言ったときの
彼女の目の輝きといったら、その威力は圧倒的で
教育を受けて、可能性が広がったほうが幸せだろうにと思うのは、
よそ者である私の身勝手な考えなのかもしれない、という思いも頭をよぎる。
さて、幸せとは何なのか。
面白い刺戟というのは、
問いを解決するのではなく、
反対に、問いを開いてくれるものなんじゃないかと思う。