2012年8月16日木曜日
かこいの外と内
8月16日、ひさしぶりに『常用字解』を開いてみた。
国(國)
「会意。もとの字は國に作り、口(い)と或(わく)を組み合わせた形。
或は口(都市をとりかこんでいる城壁の形)の周辺を戈(ほこ)で守る形で、
國のもとの字である。
或がのちに「或いは」のように用いられるようになり、混同を避けるため、
或に改めて口を加えて國とし、武装した国の都をいう。
のち、「くに」の意味に用いる。
唐代の則天武后(七世紀の女帝)は國が限定するという意味を持つ或を
構成要素としていることを不満とし、國の代わりに八方(あらゆる方向という意味)
を入れて圀(こく)の字をつくらせた。
この字はいま徳川光圀(黄門)の名前に残されている。
国の字形は國の草書体から生まれた略字であるが、
いま常用漢字として使われている。
[用例] 国益 国家の利益 / 国家 くに /国政 国の政治
国都 首都 /国防 外国の侵略に対する防備
異国 外国 /隣国 となりの国
(白川静 『常用字解』、平凡社、2003年、209頁)
古今東西、
さまざまなかこいのなかで
重大な、そして何らの事情のために解決の難しい問題が起きたとき
そこに生きるひとびとに、かこいの外に目を向けさせて、
本来の問題から注意を逸らすという力がはたらいてきたことを思い起こす。
矛の動きは、ほんとうのところは何を守ろうとしているのか
それぞれのかこいのなかで冷静に考えなければ、おそろしい。