2012年4月10日火曜日

ひだりの定義

何のために、こんなことばを辞書で引いたのか
数時間のうちにすっかり忘れてしまったが、
私の使っているカシオの電子辞書Ex-wordに入っている二つの辞書で
定義の仕方がこんなに違うのか!と驚いたのが「ひだり」。

『デジタル大辞泉』によれば
1.東に向いたとき北に当たる方。
大部分の人が、食事のとき茶碗を持つ側。
2.左方の手。ひだりて。
(以下略)

『明鏡国語辞典』によれば
①人体を対称線に沿って二分したとき、
心臓のある方。体の左側。
②「前後左右」で表される相対的方向の一つで、
①の方向。また、その方向にある場所。例えば、
話し手が北を向いたときに西に当たる方など。
(以下略)

北、東、西……ぐるぐると脳内磁針が回る。

ちなみに、スペイン王立アカデミー編纂のスペイン語辞書で
「左の(izquierdo, izquierda)」という形容詞の語義を見てみると
1.人間の体の部分について、心臓の側にある(例:左手、左目)
2.観察者(observador)の心臓と同じ側にある
(以下略)

またもや心臓。
心臓を基準に考えるなんて、人間中心の世界の見方のあらわれか!
と一瞬思ったけれど、
しかし「右」とか「左」という概念はそもそも、
目の前にいない相手に対して定義するのは難しく
辞書に載せられるほど遍く通用するような
「左」の概念の参照項を探した結果、
見つかったのが「心臓」だったのだろう。

面白くなってきたので電子辞書に戻って
オックスフォード現代英英辞典を見てみると
1.北を正面にした状態で西に向いている身体の側にある
(以下略)

……ひどくわかりにくいのは私の日本語訳のせいで、
原文はこの通り。
"on the side of your body which is towards the west
when you are facing north"


ものごとを立体的に捉えるのが苦手な頭にとっては
東だの北だの西だの言われるとそれだけで目が回り
犬が西むきゃ…ということわざが記憶によみがえる。

でもやはり、
「右」「左」の関係なんて、上下さかさまや裏表反対にすれば
すぐにひっくり返るような危ういものなのだから
自分の胸で四六時中動いている小さなポンプの位置を
手っ取り早い基準としてしまうより
地球と太陽の関係ぐらい大きなものを頼りに、
日の出から日の入りまで眺めて、こちらを東、こちらを西と呼ぶ
夜になって、空に北極星を見つけて、あちらを北と呼ぶ
これらの基準を基に、
こちらを右と呼び、こちらを左と呼ぶこととする
というぐらい慎重にしてもいいようにも思える。